冬枯れの軽井沢(その2)
木を基調とした、家庭的な雰囲気のホテルには、
昔の軽井沢のモノクロ写真が壁に何枚もあった。
軽井沢とは、大正、昭和初期には、
一般大衆の来る所ではなかった。
庶民が持っていない黒塗りの車を持ち、
貴族・華族・財閥の方々の夏の避暑地であった。
夏の社交場であったのだろう。
モノクロームの写真からは、
その華やかな時代の香りがする。
そのような一部の方々には本当に素敵な場所であり
沢山の思い出が詰まっていた場所なのだろう。
朝、万平通りを散歩してみると、
なんだか哀しくなってしまった。
それは、冬の季節の到来のせいではない。
もう、軽井沢の別荘に人が存在していないのだ。
2・3年前に訪れた時も、少しの違和感は感じたが
こんな数年で、軽井沢が枯れて行く。
モノクロームの写真は、
モノクロームの『追憶』だけが残る。
あの頃のままの軽井沢であって欲しかった。
軽井沢の住民もそう願って暮らしているのだろう。
移り行く季節と共に、
移り行く時。
季節の変化のように、
誰にも止める事はできない。
冬枯れの軽井沢。
そこには、もう、春は来ないと感じた時だった。
鮮やかな紅葉は終わり。
ただただ、強い木々だけが生息する。
人の住む事のない、
ただの自然の大地へと戻っていくのを見た気がした。
0コメント