夏が去る時
もう9月に入ってしまいました。
本当ならば、このエッセイは8月に書きたかったものです。
夏の終わりになると「鶏頭(けいとう)」の花をよく見かけます。
「鶏頭」とは、鶏の鶏冠(とさか)のような真っ赤に咲く花です。
俳句の季語では、「秋」の句なのですが、
晩夏になると「鶏頭」が思い浮かびます。
季節感を感じなくなってしまったこの頃ですが、
「鶏頭」は、夏が去るのを名残惜しむかのように、
また、秋の始まりを告げるかのように真っ赤に燃え始めます。
その様子は、土の中で何年間もの間耐えていた蝉が、
たった7日間、地上より這い上がり大木で懸命に鳴き続けるように。
「鶏頭」も懸命に咲き誇るのです。
その鮮やかさが、夏を象徴するようで。
去り行く夏を名残り惜しむかのようで。
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